化粧品の通信販売は、医薬品とは異なり、特に許認可は必要ないため、異業種からも参入しやすいです。
化粧品通販の方法は下記の4つです。
【化粧品通販の方法】
(1)自社で企画、製造委託(OEM)、顧客に通販で直接販売。
⇒異業種参入で最もメジャーな方法。
(2)化粧品メーカーや卸から仕入れて、通販で顧客に販売。
⇒化粧品関連商品やサービスがあると、販売しやすい。価格競争を超える強みが必要。
(3)自社で企画、製造を行い、顧客に通販で直接販売。
⇒いわゆるDtoCモデル。人気商品になれば、もっとも利益率が高い。
(4)海外から仕入れて、通販で顧客に販売
⇒別途、海外からの化粧品輸入ページを参照。
1.化粧品の企画
コンセプトの設定
まず、化粧品のコンセプトを決めます。通販で強いのは、普通のお店に売っていない商品です。コアなファンを呼ぶ、他社の商品にない「ユニークさ」が商品の核になります。
化粧水や美容液、クリームなど、どの種類を販売するのかを決めます。配合したい成分がある場合には、化粧品に入れられるのか、など法規制をチェックします。
ターゲット層の年齢を予想して、価格を設定します。化粧品通販のターゲット層は主に30代以上です。50~60代向けなら、ネットよりDM(ダイレクトメール)の方が効果的な場合もあります。
パッケージ・デザイン作成、容器選定
アイキャッチが欠かせない店舗販売の化粧品では、POP(ポップ)やシール、カラフルな箱など認知度の拡大と広告も兼ねた目立つパッケージが多いですが、通販化粧品のパッケージは比較的、落ち着いたデザインが多いかもしれません。広告はネットやDM、電話に特化する分、本体はシンプルですね。
どのターゲット層にどんな目的で買ってもらうか
化粧品は、「使ってみたらワクワクしそう」な世界観が大切。化粧品の効果・実感を重視してユーザーの口コミで広げるのか、それとも心ときめく工夫を凝らして、ユーザーの心をつかむのか。企業の雰囲気や持ち味を活かした方向性で進めるのが、やはり近道です。
通販化粧品は、広告やサンプルなどで初回顧客に大きく投資し、リピーターを増やすことで事業が成り立つビジネスモデルのため、「リピートしたくなる商品」が大前提です。
原価計算
化粧品本体の原価率は、一般的に低いと言われていますが、通販の販管費(通販事業の人件費、サイトなどのシステム利用料、広告費、サイト制作費、パッケージ代、DM、メルマガ、発送費、倉庫保管料、チラシ代など)を含めて収支の見込みを計算します。
2.化粧品の製造
製造委託先(OEM)の選定
OEM企業によって得意分野が異なります。たとえば、オーガニック、ナチュラル系に強い、ヘアケアのラインナップが幅広いなど。作りたい商品に強みのある企業に依頼します。
製造ロットの大きさも、企業により異なります。数百本単位でも製造は可能ですが、収益化するなら、1ロット1,000~3,000本以上が一般的です。製造時の工場視察などを考えると、近い地域が便利です。
◎化粧品の使用期限
化粧品は、賞味期限がある食品とは違っていつまでも使える印象を受けがちですが、一般的に、未開封で製造から約3年が目安。製造すれば永久に販売できるわけではないので、在庫管理のことも気に留めておくことが大切です。
自社で製造
化粧品を自社で製造する場合は、化粧品製造販売業許可を取得し、商品(品目)ごとに、化粧品製造販売届出書を行うことが必要です。
化粧品の開発
使用感や目指す美容効果、コストを基に配合成分を決めます。敏感肌対応や「○○フリー」を訴求する場合もこの段階で成分を調整します。
成分配合の設計時には加速度試験などを行い、年月が経ってからも品質が変わらないことをテストします。また製造時には、防腐力(保存性)を調べるため、微生物試験やpHなども確認しています。
モニタリング調査
試作品を使って使用感のモニタリング調査を行い、使い心地がどうだったかを年齢別、肌質別に調べます。どんな商品でも賛否両論があるため、最終的にどこで「Go」を出すかは、あなたの判断にかかっています。
利用者が化粧品を選ぶポイントは、かなり感覚的です。
(1)使っていて肌の調子がいいか、
(2)付け心地や感触などが使い心地がいいか、
(3)パッケージなど見た目が素敵で気分が上がるかの3つ。
あとは、お財布と相談・・・ではありますが、お気に入りの商品であれば奮発してしまうのも実情です。
パッケージを決定
パッケージがうまい会社は、デザインが洗練されていて、インクの色数が少なくてもパッと見て「おしゃれな感じ」に仕上げています。印刷の色数を絞るのは見た目のクオリティを下げずに地味にコスト削減できる方法です。
いよいよ製造
OEM製造時には、初回は必ず製造工程を視察し、品質管理の体制と検査結果をチェックします。
化粧品製造販売業の許可を自社で取得して販売する場合には、製造の管理責任を負います。
製品の納入、保管
製品は、自社倉庫または委託先の倉庫で保管します。化粧品は直射日光や高温多湿で成分が変質することがあるため、保管環境には十分に注意を払い冷暗所で保管しましょう。保管環境が整っていないと、カビ臭などのクレームの発生の原因にもなります。
3.化粧品の販売
自社サイトで販売
自社販売Webサイトを構築します。初期の集客コストはモールより高くなりがちですが、認知度が上がり、リピーターが増えて事業が軌道に乗れば、Web広告など販売管理費を柔軟に調整しやすく、ページ構成や販売ツール、マーケティングなどを工夫してノウハウを蓄積できる点でおすすめです。長期的に事業の規模拡大を目指す場合は、自社サイトが必須ではないでしょうか。
ショッピングモールで販売
Amazonや楽天などのショッピングモールは、通販機能が一通り備わっていて、新規参入でも販売を始めやすいのがメリット。一方、維持固定費が高く、広告費など販促費用が必要となりやすいため、直販であっても卸す場合とほとんど利益率が変わらないケースもあります。
注意すべき点は、通販の生命線である顧客リスト(メールなど顧客の連絡先)をショッピングモールが管理しているため、出展者は顧客情報にアクセスできないケースがあることです。リピーター施策もモール内に限定され、競合が多いため、価格競争が激しくなりがちです。
実際には、自社サイトとショッピングモールを兼用している企業も多いです。ただし、その場合、ショッピングモールの方が集客力、販売力は強くなりやすいため、お試し用の小さいサイズをショッピングモール、お徳用の大きめサイズを自社サイトとして、モールを集客用、自社サイトをリピーター向けと使い分けたり、自社サイトで若干価格を下げるなど、自社サイトに誘導する工夫が必要です。
支払い、配送などの契約
通販ページを立ち上げるとともに、クレジット、キャッシュレスなどの支払いと配送サービスを契約します。初めて購入者する方向けに、代引きがあると安心感があります。通販で強いのは、やはり「送料無料」でビジネスモデルを組み立てることですが、配送料が高騰している今のご時世では、ひと工夫が必要でしょう。
コールセンター
通販で唯一、顧客と直接話すコールセンターは「企業の顔」でもあり、企業の方針や空気が思いのほか伝わりやすいため、お客様対応の良しあしが企業の先行きを物語っていた、と後に実感する事例も多いです。商品の販売は、サービスありきです。
コールセンターの対応範囲は、注文、発送などのお問い合わせのほか、化粧品の使い方や美容のお悩み相談など幅広いです。新入社員も対応しやすいよう、ベテラン社員がサポートする体制をつくり、クレームなどでも落ち着いて対応できる工夫が不可欠です。フォローのできるチームワークをつくることが何より大切です。
お問い合わせ内容やクレーム、対応での課題、顧客の要望は営業やサイト運営、発送、製造サイドなどとも必ず共有し、過去の事例を生かして対応できるように工夫します。
広告を掲載
店舗をもたない通販企業は「認知度が命」です。「この企業は知っている、聞いたことがある」という気持ちが、商品への安心、そして購入につながります。そのため、事業立ち上げ時に認知度を高めるべく、強気で攻めの広告投資を行った結果、今では知名度が上がり販売が順調というケースも見られます。
広告には、少ない予算から始められるネット広告、SNS広告のほか、予算は大きいですが、多くの人の目に留まるテレビ広告(通販番組など)、新聞、雑誌、ラジオ広告などがあります。
化粧品の広告、ECサイト
目に留まりやすく、美容のお悩みに応えることができて、企業の世界観の伝わるコンテンツをつくります。購入時に必要な情報が余すところなく伝わり、追加の説明が要らない文章、ページづくりがポイントです。
化粧品は効果・効能を表現できる範囲が薬機法(医薬品医療機器等法、旧薬事法)で決まっているため、その規制を踏まえた上で、いかに商品の魅力を伝えられるかが腕の見せ所です。
商品受注・発送
通販サイトや電話、メール、はがきなどで受注し、商品を発送します。できるだけ早く発送できる体制をつくることが、キャンセル率を下げるポイントです。
商品の到着後のフォロー
化粧品の使い方パンフレットやQ&Aなどを同封し、電話やメールなどで購入後のフォローをします。気になることは電話やメールで問い合わせができるよう、お客様相談を受け付ける体制を整えます。